人が1日にどれくらいの空気を吸うか知っていますか?
それぞれ人によりますがなんと約20㎏と言われています。
キレイな空気は私たちの体の隅々まで酸素を届けてくれます。
しかし、現代に住む私たちの環境の空気は非常に汚れています。
特に世界中にある都市の大気汚染は深刻化しており、毎年多くの死者がでています。
実際、世界保健機関(WHO)は、世界人口の90%以上が安全でない大気汚染のある場所に住んでいると報告しています。
そしてこの大気汚染が、脳への影響、認知症、発達障害、血圧上昇、心臓病、脳卒中などのリスクが高まることが研究で示されています。
大気汚染の危険性と室内汚染の危険性、そして改善対策方法をそれぞれ見ていきましょう。
Contents
大気汚染の発生の仕組みと始まり
大気汚染の発生の仕組みは大きく分けて2つあります。
火山噴火や砂嵐のような自然由来のものと、排ガスや産業などの人間由来のものに分けられます。
私たちに健康被害をもたらす大気汚染は後者の人間由来のものです。
大気汚染物質である二酸化硫黄、一酸化炭素、浮遊粒子状物質、二酸化窒素などは光化学スモッグや酸性雨などの原因になります。
画像参照:環境省
人間由来の大気汚染つまり、人為的な大気汚染が始まったのは18世紀の産業革命からです。
産業革命により石炭の使用が盛んになり、同時に人口も爆発的に増加しました。
当時世界最大の都市であったロンドンでは、大気汚染で視界が悪いだけではなく、気管支炎により700人ほどの死者がでたようです。
一方、日本で最初の大気汚染が問題になったのは大阪です。1870年頃から工業化が進み発展していきました。
この頃の大阪は工場の煤煙により、50メートル先が見えなかったりと「煙の都」と揶揄されていました。
そして現代はどうでしょうか?
世界の大気汚染の実態を見ていきましょう
世界の大気汚染による死亡者数
有毒な大気汚染物質は、肺や心血管組織の深部まで入り込み、人体の健康に深刻なリスクをもたらします。
国際エネルギー機関(IEA)によると2016年の大気汚染により死亡者数が650万人いるとされています。
そしてその半数が、インドと中国に集中しています。
低・中所得国のような貧しい国や経済発展の著しい国で大気汚染の被害が拡大しています。
世界保健機関(WHO)は、大気汚染で死亡した数は、エイズ、交通事故、糖尿病などによる死亡を上回ると報告しています。
大気汚染は環境への影響以外にも、呼吸器系や循環器系に有害であることが知られています。
そして脳への影響、認知症、発達障害、血圧上昇、心臓病、脳卒中などのリスクが高まることが研究で示されています。
大気汚染による7つの健康被害
①認知症リスク
南カリフォルニア大学の研究者が行った研究では、大気汚染が認知症リスクを最大92%上昇させることが判明しました。
また主要道路の近くや繁華街のような大気汚染が多い地域に住んでいた女性は、認知機能低下のリスクが81%まで増加しました。
カナダの研究者らは、主要道路の50メートル以内に住むことが認知症発症の可能性が12%高いことを発見しました。
そこに住む場合の微小粒子状物質は、150メートル離れた距離よりも10倍高いと言います。
②血圧が上昇する
オハイオ州立大学のメディカルセンターによる研究では、大気汚染と高血圧には関係性があると見ています。
同メディカルセンターのSanjay Rajagopalan氏は10週間に渡り動物実験をしたところ、動物の血圧が上昇しました。また人を対象とした研究においても大気汚染の暴露後、数時間から数日以内に血圧が上昇したことがわかりました。
③胎児の発達問題
オーストラリアにあるクイーンズランド大学の研究によると妊娠中に都市部で大気汚染に暴露することで胎児の発達に影響を与えると警告しました。
この研究では都市の商工地区から14キロ以内の地域で行われました。そして汚染されている地域の妊婦ほど、胎児の大きさが小さかったです。
主要道路の近くに住む妊婦が最も危険にさらされています。
④喘息
エクセター大学の研究によると、汚染された都市に比べて、緑化されている地域の方が喘息の症例が少ないことがわかりました。
都市を緑地化することは、喘息を軽減させるだけではなく感情面でもプラスに働きます。
⑤小児自閉症リスク
南カリフォルニア大学とロサンゼルス小児病院の研究によると、子宮内にいる状態と生後1年の間に大気汚染に暴露した子供は自閉症のリスクが倍増する可能性があるとしています。
⑥心臓病と脳卒中
PLOS Medicine誌に掲載されたミシガン大学の研究では、大気汚染の長期暴露は動脈硬化を引き起こし、心臓病や脳卒中のリスクの可能性があることが示されています。
⑦不安障害
ジョンズホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生学部とハーバード大学の研究者は大気汚染が不安障害と関連している可能性を示しました。
この研究は57歳から85歳の7万人以上の女性を対象とし、大気汚染の微粒子の暴露の結果15%の方が不安な症状を示しました。
室内汚染の脅威
大気汚染は非常に恐ろしいですが、実はあなたの家の中にも危険が潜んでいます。
特に小さな子供は家で過ごす時間が長いため室内が汚染されていると健康に悪影響を与えます。
室内での空気汚染は喘息の悪化、頭痛、アレルギー、吐き気、疲労などを引き起こすことが研究でわかっています。
ジョンズホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生学部の研究によると、室内汚染は屋外汚染に比べて2倍高く子供の喘息を増加させたことがわかりました。別の研究では5倍高いという結果もでています。
最近の住宅環境は気密性が高く、空気も循環しません。そして、ハウスダスト、花粉、 ほこりなどが溜まってしまいます。
また室内には多くの化学物質由来の製品に囲まれています。化学物質の長期暴露で化学物質過敏症の原因にもなります。
以下が化学物質を含む製品の一例です。
・消臭、除菌スプレー
・たばこ
・化粧品
・柔軟剤
・水道水
・ホルムアルデヒドを含む製品
・建材
・オフィス機器(プリンタインクなど)
対策としてはこまめに換気したり、空気清浄機を使用することである程度防ぐことができます。
またエアコンや空気清浄機のフィルターはきちんとメンテナンスしてください。
大気汚染の改善対策はビタミンBの摂取
コロンビア大学の研究では、ビタミンBが大気汚染による心血管疾患の影響を緩和することがわかりました。
この研究では喫煙歴がなく、サプリメントや投薬を受けていない18〜60歳の健常人者10人を調べました。
キレイな空気に対する基本反応を測定した後、PM2.5の高濃度の微粒子状物質を含む空気にさらされました。
その後にビタミンB療法が4週間続きました。
サプリメントの摂取後、参加者の心拍数に対する大気汚染の影響は150%減少、総白血球数に対する影響は139%減少、リンパ球数に対する影響は106%減少しました。
このサプリメントは、ビタミンB6が50ミリグラム、葉酸が2.5ミリグラム、ビタミンB12が1ミリグラムを含んでいました。
その他にもワシントン大学公衆衛生大学院の研究では、大気汚染により発生した喘息はビタミンA、ビタミンCが役立つとされています。
またハーバード公衆衛生大学院の研究では、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12が大気汚染から心臓を守るのに役立つとされています。
最後に
発展途上国や成長著しい新興国では、国家発展、経済発展の為、様々な産業が生まれていきます。
国家や国民の利便性が高まり豊かになる反面、環境問題がついてまわります。
それは、土壌汚染、水質汚染、海洋汚染、酸性雨、生態系の破壊と枚挙にいとまがありません。
そして国家が長い時間をかけ、責任を持って対処していかなければなりません。
特に大気汚染の問題は、世界で4番目に高い死亡リスクとなっています。
世界保健機関(WHO)は、世界人口の90%以上が安全でない大気汚染のある場所に住んでいると報告しています。
この影響は、国を支えていく将来の子供に影響を及ぼします。
子供を守るために大人が積極的に理解していかないといけない問題です。
けっして他人事ではありません。
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