海に捨てられたプラスチックのごみは、海を漂っている間に細かく砕かれ食物連鎖に大きな影響を与えています。
この細かく砕かれたプラスチックのことをマイクロプラスチックと呼びます。
このマイクロプラスチックを魚が食べてしまい、現在世界で売られている魚の4分の1以上がマイクロプラスチックで汚染されている状況です。
人類の共通である命の源である海が、大量生産、大量消費の経済システムのごみ捨て場になっています。
マイクロプラスチックという環境問題をみていきましょう。
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海に流れる大量のプラスチック
プラスチックの誕生で私たちの生活環境は大きく変化し、また経済成長の一因になったことは言うまでもありません。
周りを見渡せば、ほとんどがプラスチック製品に囲まれています。
大量生産、大量消費の経済システムでは、使い捨ての社会が生まれてしまいます。
1960年代までは、ほとんどの食品や商品はガラス瓶に入れられていました。
今ではガラスに入れられた食品や商品は数少なくなりましたよね。
海には様々なゴミが散乱しています。人為的な海のゴミの70%はプラスチック製品です。
世界中から海に流れ出るプラスチックの量は、年間最大1300万トンと言われています。
そして専門家は海洋に1億6500万トンのプラスチックが既にあると推定しています。
マイクロプラスチックとは
画像参照:一般社団法人環境金融研究機構
マイクロプラスチックとは海に流出したペットボトルやレジ袋のようなプラスチックが海を漂っている間に砕けてどんどん小さくなったものです。
研究者によって大きさの定義がはっきりと決まってはいませんが、1mm以下または5㎜以下のプラスチックをマイクロプラスチックと呼ばれます。
カリフォルニア州立大学の海洋専門家は、マイクロプラスチックによる汚染が着実に世界の海洋に脅威をもたらしていると警笛を鳴らしています。
世界の海にはなんと5兆個のマイクロプラスチックが浮遊している推定されています。
魚がマイクロプラスチックを食べてしまう
キレイに見えるような海でも、目に見えないレベルではマイクロプラスチックが浮遊しています。
そしてマイクロプラスチックの大きさはちょうど動物プランクトン程度になります。
その為、海洋生物が誤って食べてしまいます。
大規模な回遊を行うマグロ、クジラ、カツオ、サバなどは必然的に多くのマイクロプラスチックを取りいれてしまいます。
更にマイクロプラスチックは重金属、石油、殺虫剤の成分の有害物質や汚染物質が付着しやすい性質があります。
食物連鎖の頂点に立てば立つほど汚染されていく構造です。もちろん食物連鎖の頂点は人間です。
実際にカリフォルニア沿岸の複数のカニ種の消化器系を調べたところ、 研究者らは、多くのカニ種でマイクロプラスチックが発見されました。
またその中で約100個のマイクロプラスチックの断片があることを確認しています。
魚の4分の1以上がマイクロプラスチックで汚染されている
国連環境プロジェクト報告のデータによると 、世界中で売られている魚の4分の1以上がマイクロプラスチックで汚染されていました。
この研究を実施するために、カリフォルニアとインドネシアの市場で販売されている魚の腸サンプルを検査しました。
研究者らは、マイクロプラスチックで汚染された大量の魚介類を消費すると、人間の健康状態が悪化する可能性があると警告しました。
魚を食べる事で間接的にプラスチックを食べていると思うと怖いですよね。
日本人は魚をよく食べる民族です。寿司や刺身は欠かせない食文化です。
しかしプラスチックや魚を通じて体内に入ったプラスチックは分解されません。その為、様々な悪影響がでることは言うまでもありません。
またプラスチック自体の永続性がどれくらいなのかはわかっておらず、何世紀にも渡り存在する可能性が高い物質です。
報告書によると、世界のいくつかの地域では、より高いレベルのマイクロプラスチック汚染が確認されています。
例えば、東アジアでは、世界の他の地域と比較して、海洋に27倍のマイクロプラスチックがあることが判明しました。
東アジアにマイクロプラスチックが多い理由は、世界のプラスチックの約60%が中国、フィリピン、タイ、インドネシア、ベトナムの5カ国によるものだからです。
中国以外はASEAN(東南アジア諸国連合)に属しています。
2014年の総人口は6億2000万人超で、EU(欧州連合)の5億人より多い状況です。
「バブル再来」というハリー・S・デント氏が書いた本は、人口動態が景気や株価に影響するという人口統計学を活用したものです。
これから経済発展が期待されている市場なので、それと比例してマイクロプラスチックによる環境汚染が続くと予想されます。
マイクロビーズ製品を規制する理由
マイクロビーズとは、直径が0.5mm以下のプラスチック粒子のことを指します。
歯磨き粉、スクラブ洗顔、化粧品の一部にマイクロビーズが使われています。
成分表示にはマイクロビーズという記載はなく。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの名前で記載されています。
厚生労働省も、スクラブ入りの洗顔料について「眼表面を傷つけるおそれがある」と注意喚起しています。
マイクロビーズは下水処理システムを通り抜けてしまうため、海に流れ出てしまいます。
マイクロビーズも海洋汚染のひとつの原因になっています。
2015年12月、アメリカでオバマ大統領が「マイクロビーズ除去海域法」という法案を通しました。
2018年6月にはマイクロビーズが含まれた製品の販売が全面禁止になります。
世界的にマイクロビーズの排除、規制の動きが強くなってきたことは、良い兆候です。
最後に
プラスチックの誕生でわたしたちの生活は劇的に変わり、なくてはならない存在となりました。
プラスチックは経済の原動力になり、わたしたちの生活を豊かにしてくれたことは確かです。
しかし、その負の要素は海を傷つけ、海洋生物に大きな影響を与えたことは忘れてはいけません。
因果応報により最終的には食物連鎖の頂点に立つ人間に還ってきます。
人は自分に健康被害が出ない限り、他人事ですませる傾向があります。
他人事とは思わずに個人レベルでできることはたくさんあります。
マイクロビーズの含まれている製品は使わない、レジ袋をもらわないなど小さな積み重ねが大きな結果を生みます。
できることから始めてみましょう。
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